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「截金(きりかね)彩色の世界」

番組ディレクター時代に京都の大仏師・松本明慶氏とのご縁から、

若手でとても手先の器用なお弟子さんをご紹介頂いた。お名前は長谷川智彩さん。

そんな彼女と出会って20年。

2014年2月18日〜23日まで東京銀座で初の個展を開催される。

彼女は当時「智彩堂」という工房を構え、なんと若いのにお弟子さんが10名ほど

おられ、驚いたのが初めての出会いであった。何故それだけ集まってきたのか?

それは彼女の仕事、截金を見れば圧倒される。

下書きは一切なく、正確に迷いもなく筆を動かし、

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極細に切って貼付けて模様を描き出す世界は美しいという以外なかった。

 

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そんな彼女、智彩さんをドキュメント方法で取材する運びとなり、

何度もご自宅や実家、ありとあらゆる角度から取材をさせて頂き、

放送数日前、朝方まで編集作業があり一旦自宅に戻りまた会社へ

向かおうとした時であった。

今までにない揺れが起こり、何が何だか分からなく、部屋中の家具等が崩れ落ちた。

そう!あの阪神淡路大震災だった。

即テレビをつけ状況確認ができたが、そこから現場には到底行けない、

報道にいた私は、何とかして出てきて欲しい!という招集がかかった。

数時間後、会社集合ができ、指令は現地に入る!であった。

大阪から神戸まで10時間以上かけ移動。この移動中に、冷静になることと

今後の対応であった。つまり今抱えている案件は後回しとなる。

数日後に放送が控えていたが、電話も繋がらないのもあるが、

やはり神戸が最優先であるのは言うまでもない。

そして何日か経った後、交代で大阪に戻ってきた際に智彩さんにご連絡を入れ、

一旦、取材はストップさせて欲しい旨をお伝えしたところ、彼女は電話の向こうで、

勿論です!そう思っていました、被災者の皆様が最優先ですので、

私は構いませんので最優先して下さい!というお言葉を頂き、我々は現場に戻った。

彼女を取材する中で、軸においていたのは、何よりも人間性であった。

とても心のきれいな方で、しっかりとした姿勢が作品に出ていることは、

素人の私にも理解できるほどであった。

阪神淡路大震災から半年以上がたった頃であっただろうか……

お蔵入りを覚悟していた智彩さんの作品が、再度日の目を浴びるときが来た。

もう一度、季節も変わっていることもあるので、再度撮り直す部分も多かったが、

放送までたどり着けた。後に彼女はテレビ取材等で度々紹介され反響を呼んだ。

その様な、状況の中で制作させて頂けたご縁!印象も大きな物へと変わり、

それ以来、交流を持たせて頂いている。

上記でもご説明させて頂いた、智彩さんが初の個展を開かれる。

彼女はある番組の中で、ボストン美術館の現物をくまなく観察して、

截金(きりかね)という技法を広く紹介するに至った。ご興味のある方は、

ぜひ会場に足を運ばれては如何でしょうか。詳しくは☞ http://chisai.main.jp/

 

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